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アフリカの先史美術

アフリカの先史美術で最も重要なのが岩壁画です。当時生息していた動物や人々の生活のようすが、線刻や彩色で描かれています。動物は写実的に描かれるのに対して、人物はある程度様式化されているのが特徴です。アフリカの岩壁画のほとんどは1万年前以降の完新世になってから残されたもので、アフリカ全域で見つかっています。ここでは発見数が多く調査も進んでいるサハラと南アフリカの岩壁画について説明します。

サハラの岩壁画

アフリカのサハラは今でこそ砂漠地帯ですが、かつておだやかな気候にめぐまれた時期がありました。約6000年前からの数千年間を「気候適期(ヒプシサーマル)」と言います。気候適期のサハラには川や沼があり、漁労も行われてたようです。気候適期後は人が住める環境ではなくなり、地中海と内陸アフリカをつなぐ通商路がおかれる地帯となりました。

こうした気候の変化および生活の変化は、サハラの岩壁画の中に確かに描かれています。タッシリ・ナジェールの遺跡群を発見したアンリ・ロートによれば、サハラの岩壁画はその主題によって4つの時期に分けられます。狩猟民の時代 → 牛飼養民の時代 → 馬の時代 → ラクダの時代 という変遷を辿ります。

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完新世になり温和で湿潤な気候に傾いたのが「狩猟民の時代」です(図版1)。サハラに野生動物が出現し、それらを追って人々が居住するようになりました。この時代の人物像は丸い頭で描かれました。

牛の飼育が本格化したのが「牛飼養民の時代」です(図版2)。牧畜には大量の草が必要なので、草の生育に十分なだけの雨量がサハラの地にあったことになります。

気候適期を過ぎて厳しい気候がサハラをおおいます。それが「馬の時代」です(図版3)。サハラはもはや居住地ではなくなり、もっぱら移動の経由地として使われるようになります。地中海と内陸アフリカをつなぐ交通路とが整備され、移動手段として二輪馬車や騎馬が広まりました。岩壁画もこれらの道沿いで多く見つかっています。

さらに乾燥が激しくなると「ラクダの時代」に移ります(図版4)。馬での移動が不可能になりラクダが利用されるようになりました。

南アフリカの岩壁画

サハラの岩壁画と違い、南アフリカの岩壁画には明確な年代区分がありません。それは南アフリカがサハラほど歴史的な気候変化を経験していないからです。描かれる動物相に変化がないため、時期によって岩壁画を分類することが難しいのです。南アメリカは農耕牧畜の開始が北部より遅かったという事情も、絵の主題に変化が少ない理由となっています。

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作品データ

  1. タン・ズマイタク遺跡壁画、「着飾った人物」 狩猟民の時代 アルジェリア、タッシリ・ナジェール
  2. イン・アウアンレート遺跡壁画、牛の群れと狩人と舟 牛飼養民の時代 アルジェリア、タッシリ・ナジェール
  3. ティン・アボテカ遺跡壁画、二輪馬車に乗る人 馬の時代 アルジェリア、タッシリ・ナジェール
  4. ジャネット・オアシス遺跡壁画、ラクダに乗る人 ラクダの時代 アルジェリア、タッシリ・ナジェール
  5. ゲーム・パス遺跡壁画、エランドの尻尾を掴む人 南アフリカ、ナタール州

参考文献

  • 青柳正規、大貫良夫(編)『世界美術大全集 西洋編 第1巻 先史美術と中南米美術』小学館 1995