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アマゾニアとカリブ海地域の古代美術

アマゾン川沿いの熱帯性低地帯はアマゾニアと呼ばれ、その領域は南米大陸の三分の一を占めるほど広大です。アマゾニアには古くから土器装飾の伝統があり、その影響はカリブ海地域にも及びました。アマゾニア土器の詳細を見ていく前に、年代ごとの特色や系統を知っておくとよいでしょう。考古学者ベティ・メガーズによると、アマゾニアの土器スタイルは次の4つの時期に区分されます。

  1. アナナトゥバ文化
    • アマゾン川河口のマラジョー島発祥。器の表面を刻線で分割し、その中を文様で埋めるのが特徴。
  2. バランコイド文化
    • ベネズエラのオリノコ川河口で発達。刻線と塑像の組み合わせ、人間や動物のモチーフ、よく磨かれた表面が特徴。
  3. マラジョー文化
    • 主に赤、黒、茶で色付け。刻線や浮彫りによる複雑な装飾。
  4. アラウキン文化
    • オリノコ川中流で勃興。刻線、刺突文、塑像による装飾。

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ここでは、アマゾニアを代表するマラジョー文化とサンタレン文化、カリブ海地域に属するバレンシア文化とタイノ文化について説明します。

マラジョー文化

マラジョー文化が生み出した第三様式の土器は、白やクリーム色の地に赤、黒、茶などで彩色を施します。また複雑な刻線や浮彫りの装飾もよく見られます。渦巻きはじめとする幾何学文様が動物や人間の体の中に描かれました。

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マラジョー文化の遺物は埋葬儀礼に関わるものがほとんどです。当時は二次埋葬といって、遺体が骨になるのを待ち、それを壺に入れて土に埋め直す慣習がありました。図版2は典型的な納骨用のかめです。全体として女性を表しており、膝を曲げて開脚しているような図像が胴部に描かれました。

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他地域でもユニークな埋葬用土器が作られました。マラカ川流域の洞窟で出土した甕は、椅子に腰掛けた人間の姿をしています。頭部が蓋になっておりそこから骨を出し入れできました。

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サンタレン文化

サンタレン文化が属する第四様式は、刻線、刺突文、塑像による装飾を特徴とします。サンタレン土器はマラジョー土器との比較で見ていくとわかりやすいでしょう。マラジョー文化は土器に描く文様や図像にこだわりましたが、サンタレン文化は土器の形に工夫をこらしました。

粘土の可塑性を活かして個性的に造形されたサンタレン土器ですが、とりわけよく見られる器形があります。一つは水差し容器です(図版4)。左右に伸びた胴部にジャガー等の動物や人間が乗った形をしています。もう一つは糸切り底の鉢形土器です(図版5)。鉢が上下に分かれており、その間を人型の小像が支えるデザインになっています。

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サンタレン文化の土偶は、コーヒー豆の目と多様なポーズが特徴です。男性はシルクハットと腕輪(図版6)、女性はヘッドバンドと耳飾り(図版7)を身につけた姿で描かれました。

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バレンシア文化

第四様式、すなわちアラウキン文化の系譜を汲むのはサンタレン文化だけではありません。ベネズエラのバレンシア文化も個性的な造形表現に長じていました。バレンシア文化によく見られるヴィーナス像は、横長の顔にコーヒー豆の目を持ちます。胴は長く、足は短く、頬おさえるか腰に手を当てるかのポーズで表されます。

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タイノ文化

バランコイド文化の第二様式は、カリブ海のアンティル諸島にまで到達しました。まずチコイド文化が興り、これを核にタイノ文化が発展しました。タイノ文化によく見られる三角型の工芸品は「セミ」と呼ばれています。石、木、骨などを材料とし、蛇や人間の顔を彫り出しました。

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作品データ

  1. 動物装飾の壺 マラジョー文化 400~1300年頃 土器 浮彫り 高さ34.0cm サン・パウロ, 個人蔵
  2. 女性像の甕 マラジョー文化 400~1300年頃 彩色土器 高さ51.0cm サン・パウロ, 個人蔵
  3. 人物形の甕 1400~1700年頃 ブラジル, マラカ川流域出土 彩色土器 高さ31.5cm ブラジル, ベレン, エミリオ・ゲルジ博物館
  4. 動物装飾の容器 サンタレン文化 1200~1500年頃 土器 高さ20.0cm ブラジル, ベレン, エミリオ・ゲルジ博物館
  5. 人物・動物装飾の鉢 サンタレン 1200~1500年頃 土器 高さ16.5cm サン・パウロ大学考古学民族学博物館
  6. しゃがむ男 サンタレン文化 1200~1500年頃 彩色土偶 高さ20.5cm ブラジル, ベレン, エミリオ・ゲルジ博物館
  7. 鉢を持つ女 サンタレン文化 1200~1500年頃 彩色土偶 高さ28.0cm ブラジル, ベレン, エミリオ・ゲルジ博物館
  8. 頬を押さえる女 バレンシア文化 1000~1500年頃 ベネズエラ, バレンシア湖地方出土 彩色土偶 高さ18.1cm ベネズエラ, カラカス自然科学博物館
  9. 女性像 バレンシア文化 1000~1500年頃 ベネズエラ, バレンシア湖地方出土 彩色土偶 高さ38.0cm ベネズエラ, カラカス自然科学博物館
  10. 神像(セミ) タイノ文化 1000~1500年頃 石 高さ12.0cm サント・ドミンゴ, ガルシア・アレバロ博物館

参考文献

  • 青柳正規, 大貫良夫(編)『世界美術大全集 西洋編 第1巻 先史美術と中南米美術』小学館 1995